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エンジニアリングマネージャーの備忘録です

ネガティブなフィードバックをする時に気をつけていること

メンバーへのフィードバックはエンジニアリングマネージャー(EM)にとって欠かせない業務の一つです。ただ、それがネガティブな内容を含む場合、相手を傷付けてしまわないか、納得してもらえないのではないかという不安や、自分が本当に正しいんだろうか、偉そうにみえてしまわないかという迷いがつきまとい、非常に精神的なエネルギーを消費します。個人的には、EM業務の中で最もハードなものに部類します。

しかし、不安や迷いを抱えながら中途半端なフィードバックをされてもメンバーにとってはいい迷惑です。耳が痛い内容でも前向きに捉えてもらうための努力をEMとして最大限すべきと考えます。感情的な負担に負けず、自信を持ちながら迷いのないフィードバックを実践するために自分が気をつけていることを自己整理のため書き出してみました。

1.冒頭で、相手の成長のためであることを伝える

誰もが、自分ができていないことを指摘されるのは気分が良くないもので、フィードバックを受けるとなると、普通は身構えてしまいます。最初から対立する雰囲気が生まれると、受け手も素直に受け入れることが難しくなり、フィードバックする側としても精神的に辛く感じてしまいます。

相手に受け入れてもらうために、本題に入る前に「いまからネガティブなフィードバックをするが、それはあなたの成長のために行うものだ。耳が痛い話かもしれないが、必ず改善できるはずなのでよく聞いてほしい」ということを伝えるようにしています。成長にむけた話として捉えてもらうことで、前向きな姿勢で聞いてもらうようにします。また、フィードバックを成長のための課題とすることで、あなたvsわたしの構造ではなく、課題vsわたしたちという構造を構築できます。

2.ポジティブな話でごまかさない

ネガティブな話を伝えるときに、サンドウィッチ型フィードバックでごまかさないように気をつけています。サンドウィッチ型とは、ネガティブな話の前後にポジティブな話を挟むフィードバック方法で、クッションを置くことで中間のネガティブな話を受け入れやすくする効果があります。

確かにサンドウィッチ型を使用すると、フィードバックする側としても少し気が楽になりますが、本当に伝えたいネガティブな内容が薄まってしまうデメリットもあると言われています。個人的にはサンドウィッチ型を選択するのはフィードバックする側の都合が強いと感じており、相手に受け止めてもらうためには、やはり誠実に本題であるネガティブフィードバックだけを伝えるほうがより効果的だと考えています。

3.「〜のように見えています」と周りから見えている姿を伝える

相手の行動の良し悪しを判断するのはとても難しいことです。伝え方を間違えれば、信頼を失います。

「〜をしたのは良くなかったね」といった形で行動と評価を結びつけるのではなく、「あなたの行動は〜のように見えています。それにより、周りは〜な影響を受けています。」と、相手の行動や姿を鏡のように伝えるようにしています。相手の行動が周囲からはどのように見えどう感じられているかは周囲に主体が有るため、客観的な事実としてはっきりと伝えることができます。

この方法の利点は「人格否定につながりにくい」という点にあると感じます。どうしてもネガティブなフィードバックは「人格を否定された」と受け取られることがありますが、客観的に見た事実として伝えることで、行動やアウトプットに問題があると受け入れてもらいやすくなります。

相手の行動を鏡として映すためには、客観的な事実を集めることが不可欠です。自分の思い込みを頼ったり、第三者から聞いた話を鵜呑みにしてしまうと、事実と異なることを伝えてしまい、相手を傷つけてしまうかもしれません。客観的事実を集めるためには、偏見を排除し、自分で確かめる、ログを確認し、定量的なデータで検証するなど、情報収集を時間が許す限り丁寧に行うよう心がけています。

4.改善方法を自分で考えてもらう

フィードバックで伝えたことは本人にはしっかりと受け止めてもらいたいものですが、それが影響して相手が消極的になってしまったり自信を失ってしまうことは望んでいません。

改善策までを具体的に指示してしまうと自律を妨げてしまうため、どのように改善できるか、できるだけ本人に考えてもらうように心がけています。相手のレベルや課題によっては自分で考えることが難しい場合も、対話の中で相手から引き出せないかを試みます。

すぐに答えが出るものではないのでフィードバックの場では沈黙が続くこともありますが、考えてもらうことが大事なので、沈黙に耐えこちらからのサポートは極力我慢します。また一度のフィードバックの場で答えを出す必要は良いので、時間をおいて考えてきてもらうでも良いと思います。


ネガティブなフィードバックは伝える側としても精神的なしんどさをともないますが、うまく伝えることで相手の成長をうながしチームの健全性を維持できるため、改めて重要だと感じます。一方でヘタをすると人を傷つけ信頼を失ってしまうもので、今後も真摯に向き合いたいです。

参考書籍

フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術

自律型組織をつくるマネジメント変革