chomeブログ

エンジニアリングマネージャーの備忘録です

EMが転職後の焦りと仲良く付き合っていくためにやったこと

こんにちは、エンジニアリングマネージャーの chome (@anachro3)です。この記事は Engineering Manager Advent Calendar 2021(その2) の20日目の記事です。

今年の10月に転職し、Baseconnect Inc.にエンジニアリングマネージャー(以下EM)として入社しました。初めての転職ということもあり、入社後に感じたこと試したことを書いてみます。

これはなに?

EMが転職後に感じた焦りと向き合い、焦りと仲良く付き合っていくために試したことをまとめた記事です。

私自身は今回が生まれて初めての転職でした。くわえて技術スタックもLAMP環境主体からRuby、React主体の環境に変わりました。マネジメントも前職で行っていたのはプロジェクトや運用チームのマネジメントが主で、エンジニアチームのマネージを任されるのは初めてという、変化の大きい転職でした。(正確にはまだマネージャー候補です)

新しい環境で2ヶ月を過ごして思うのは、想像していたよりも焦りを感じたということです。私自身、受け入れる側として転職者と向き合ってきた中で、入社後オンボーディング中の辛さは聞いていましたが、いざ当事者になってみると聞いていた以上だなと感じました。

日増しに焦りがつのっていく日々に、私は思い悩み、自信が崩れ、自暴自棄になり、毎晩酒に逃げるように・・・ということには全くならず「え、何この感情?めっちゃレアじゃん!貴重な体験やし自分自身を観察して対策を立ててみよう!」と、何でもネタにしようとする関西人のノリが発動しました。

転職後の焦りがどこから来るかを自分なりに整理し、自己のはたらきかけで解消できるものとどうしようもないものを分類し、解消に向けたアクションをとってみました。これからEMを目指す人や、エンジニア部門の人事担当者の方に参考にしてもらえると幸いです。前提として、EM職の場合の事例であることにご留意ください。

転職後の焦りはどこから来るか

まず、自分が転職後に感じた焦りの要因を分類しました。

①マネジメントされる側になるギャップ

新しい職場ではオンボーディングを丁寧に行ってもらいました。どの領域で力を発揮していきたいかのすり合わせや、エンジニアとしての社内ルールのレクチャーなど、部門長とオンボーディング担当者に丁寧にみてもらえる環境でした。それは良いことのはずなのですが、困ったことに、丁寧に接してもらうほど、前職では自分が行っていたマネジメントを自分が受けていることにギャップを感じ、もどかしさがありました。職業感の中でのアイデンティティが無くなるような感覚でした。

②情報を持っていないことによる不安

マネージャーの仕事に一つに「情報を活かすこと」があります。書籍「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」ではマネージャーがすべき行動として、現場での情報を収集し活かすこと、現場に必要な情報をもたらすことがあげられています。前職でも、経営層と現場、クライアントと自社、メンバーの間に立ち、情報をつなぐ動きをしていた感覚があります。

転職後は、当たり前ですが、事業のことも組織のこともプロダクトのことも、さっぱりわからないことばかりです。これは、マネージャー職にとっては、まるで武器をもたずパンツ一丁でモンスターがいるフィールドに立っているような感覚です。マネージャーにとって何をするにしても情報が足場になることを認識しました。

③期待値の大きさ

入社後、経営層やメンバーと話していくうちに、嬉しいことに思ったよりも期待をいただいている事に気づきました。もちろん、ポジションに限らず中途入社者は何かしらの期待があって採用されているので、期待されるのは当たり前です。また、雰囲気から感じてそう思っているところもあるので、実際のところの期待値はわかりません(自意識過剰かもしれません)。

ただ、リップサービスもあるとはいえ「これまでの豊富なプロジェクト経験を活かして〜」といわれれば「いやそこまで豊富でもないんだけどな・・・」と思ったり、「これまでのうちのやり方に縛られずに新しいことを〜」と言われると「いやまだ現状を知るのに精一杯なんですけど・・・」と思ったりして、期待が先走っているような感覚をうけました。この期待値のギャップは、採用面談の時に受かるために自分を良く魅せようとしていたことが要因なので、身から出たサビ、起こるべくして起こるギャップではあるのですが、正直プレッシャーは感じます・・・。

④結果が出るまでの期間の長さ

入社して2週間ほど経つと、徐々にですが、1on1や開発フローの改善検討、エンジニア採用といった具体的な仕事を任せてもらえるようになりました。ただ、こういったマネジメント系の業務はすぐには結果がでず、結果がでるまで数ヶ月とか一定の期間がかかるものです。

開発系のタスクも一部担っていたので、「あいつ何もしてなくない?」と思われないためにより早くプルリクを出そうともがんばりました。ただ、EMとして求められているのはそこではないよなー、と、プルリクを出せば出すほどEMとしての結果がすぐに出ないことにもどかしさを感じました。

⑤関心事の多さ

EMの職務領域は明確な定義はなく企業によって変わるところですが、一般的には広くなりがちです。広木大地さんの「エンジニアリングマネージャ/プロダクトマネージャのための知識体系と読書ガイド」で定義される強いEMを求めてしまうと、エンジニア部門のマネージに加えてプロジェクトやプロダクトについても働きかけが必要になり、関心事はかなり多くなってしまいます。

私の場合は組織自体が変化のタイミングということもあり、EMとして何をしていくか領域を絞らず進めながらすり合わせていく事になっていました。くわえて技術スタック自体が変わるため、基礎的な技術領域の再勉強も必要になり、関心事の多さにプチパニックでした。

焦りと仲良くするためにやったこと

次に、焦りの要因に対して、どういうアクションが取れるかを考えました。

情報が集まる場に行く

まずは組織のことを知るのが大事だと思い、自分から情報収集の機会をつくるようにしました。具体的には、自分がアサインされていないプロジェクトや他部門のミーティングに、情報が集まっていそうだと思えば許可をもらって参加していました。入社してしばらくは時間的余裕があったのでできたことです。

特にプロジェクトふりかえり会への参加は、これまでの情報が凝縮されており開発プロセスの課題感がつかめたのでとてもよかったです。直近では、メンバーのGoogleカレンダーを見て面白そうなミーティングがないかを探るのが日課になっています。

また、部門長のはからいで、営業や企画といった他部門の方との1on1の機会を作っていただき、これも部門間の連携の課題を掴むのに非常に役立ちました。部門を超える調整になるので会社によっては難しいかもしれませんが、はたらきかけてみる価値はあると思います。

注力する領域を絞る

情報が集まってくると、少しずつ開発部門の解像度が上がり、課題感がわかるようになってきました。組織的な課題や技術的な課題の全てに手を広げてしまうと中途半端になることは見えていたので、注力するポイントを絞ることにしました。

前述の広木大地さんの記事を参考に、EMの4象限の中から、自分がやりたいこと・できることと、開発組織にとって必要なことの重なる部分がどこか考えました。私の場合、デプロイや品質周りの課題に対して自分の経験が活かせるイメージがあったので、特にプロジェクトマネジメントに注力しようと考えました。

自分の中で比重を置くところを明確にしたというだけですが、それだけでも関心事の優先度が整理でき、頭をすっきりさせることができました

メンバーからの期待値を不要にあげない

1on1の機会があったので、自分が得意なことに加えて、苦手なこと、やっていきたいことがあるが中長期的にはなることを伝えるようにし、期待値の調整を行いました。

また、メンバーには「EMに期待していることを聞かない」ように注意していました。期待をメンバーに聞いても全てに応えられるわけではなく、応えられなかった時にがっかりさせてしまうためです。1on1では課題感を探るようにし、組織の目標と合わせて何ができるかを考えることを大事にしました。

※ この「期待していることをメンバーに聞かないようにする」やり方は、Meetyで面談させていただいた西場さんからアドバイスいただいたものです(その節はありがとうございました!)。Meety では転職前にEMのキャリアについて複数の方にご相談させていただき、アドバイスをいただきました。こういった面談ツールの活用も転職の不安解消の方法としてオススメできます。

焦らずに焦りを受け入れる

ここまで3つ対策を立ててみましたが、焦りを解消しきるには十分ではありませんでした。ただ、やれることをやってみると、あとはもう時間が解決するのを待つしかないなと気持ちを切り替えることができました。それまでは焦ることをネガティブに捉えていましたが、無理に焦る気持ちを否定せず、「ちょっと焦るくらいがちょうどよいよね」と焦る自分を認めるようなスタンスでいることが、バランスがいいなと思うようになりました。

転職者からするとまわりの評価は気になるものですが、受け入れ側からすると意外と急かす気持ちはなく、中長期的に活躍してくれることを期待しているものです。当事者がそのマインドを持つのは難しいですが、私の場合、以下の記事が気持ちを切り替える助けに非常になりました。

note.com

終わりに

EMとして転職した後に感じた焦りと向き合い、やってきたことについてまとめました。転職後の焦りにはいくつかの要因があり、それを紐解いていくだけで少し心の安定を得ることができました。手を打てることは打った上で、どうしようもないことに対しては、焦らずに焦りと長期的に付き合っていく思考になることが肝要だと学びました(タイトルの“仲良くする”はここから来ています)。

初めての転職は、不安だけではありません。新しい職場では、エンジニア同士が助けあう雰囲気があり、ご多分に漏れず助けてもらっています。社内勉強会も盛んで、私自身、入社1週間目でLTする機会があり、刺激を与え合う環境があります。総じて、挑戦することを楽しむ雰囲気の中で前を向いて仕事ができています。

また辛いことがでてきたらネタにして、長期視点でやっていこうと思います。